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相続税申告(相続発生後)

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相続税を申告・納付する義務者

  • 文責:代表 税理士 西尾有司
  • 最終更新日:2022年9月8日

1 相続税が課税される可能性がある人

⑴ 相続または遺贈により財産を取得した人

相続税は、相続または遺贈によって財産を取得した場合に課税される可能性があります。

まず、被相続人の法定相続人であり、遺産分割によって財産を取得した場合には、相続税の納税義務者になる可能性があります。

また、遺産分割が未了であったとしても、申告期限が経過する時点(つまり、相続が発生したことを知ってから10か月後)で、相続分を主張することができる場合には、相続税の納税義務者になる可能性があります。

次に、遺言によって財産を取得することとなった場合も、相続税が課税される可能性があります。

法定相続人でなかったとしても、遺言によって財産を取得することとなった場合には、相続税の納税義務者になる可能性があります。

他には、死因贈与によって財産を取得した場合も、相続税が課税される可能性があります。

死因贈与とは、被相続人が生前、誰かとの間で、被相続人が亡くなった場合に、財産を贈与することを合意することを言いますが、この場合も、遺贈と同じように扱われ、相続税が課税される可能性があります。

⑵ 生命保険金、死亡退職金を取得した人

相続または遺贈によって財産を取得した場合にはあたりませんが、生命保険金や死亡退職金を受け取った場合も、相続税が課税される可能性があります。

この場合も、受取人が相続人であったとしても、相続人でなかったとしても、相続税が課税される可能性があります。

⑶ 相続時精算課税制度により財産の贈与を受けた人

相続時精算課税制度を利用すると、生前贈与された財産については、2500万円までは、贈与税が課税されないこととなりますが、代わりに相続税が課税されることとなります。

このため、相続時精算課税制度を利用して生前贈与を受けた人についても、相続税の納税義務者になる可能性があります。

2 課税価格が一定額を超えると、相続税の申告を行う義務が生じる

上記の人が相続税の申告を行う義務を負うのは、課税価格が基礎控除額を超える場合です。

課税価格は、おおむね、以下の計算式により算定されます。

相続財産の総額-相続債務の総額+生命保険金額・死亡退職金額+相続時精算課税制度により生前贈与された財産額+相続前3年以内に相続人等に対して生前贈与された財産額

つまり、上記⑴から⑶で受け取った財産の総額から、相続債務額を差し引き、相続前3年以内に相続人等に対して生前贈与された財産額を加算した金額が基礎控除額を超えるかどうかにより判断されることとなります。

ただし、生命保険金や死亡退職金については、相続人が受け取ったものについては、500万円×法定相続人数の非課税枠が存在します。

反面、相続人以外が受け取った生命保険金・死亡退職金については、全額が相続税の課税対象になります。

また、相続または遺贈により財産を取得した人、生命保険金・死亡保険金を受け取った人が、相続開始前3年以内に生前贈与を受けた財産についても、相続税の課税価格に加算されます。

他方、基礎控除額は、以下のとおりとなっています。

3000万円+600万円×法定相続人数

3 相続税の申告を行う義務はあるが、納付の義務を負わなくなる場合

相続税の課税価格が基礎控除額を超えている場合であっても、特例を利用することにより、相続税が課税されなくなることがあります。

具体的には、小規模宅地等の特例の制度や配偶者の税額軽減の制度を利用することにより、相続税が軽減されたり、非課税になったりすることがあります。

このような場合には、特例を利用する前提要件として、相続税の申告を行う義務はありますが、相続税の納付の義務を負わなくて済む可能性があることとなります。

なお、障害者控除や未成年者控除については、申告が要件となっていませんので、申告を行わなくても、これらの制度の適用を受けることができます。

もっとも、これらの制度を用いることができる場合であっても、税務署に対して、相続税の納付の義務を負わないことを明確にするため、扶養義務者にも特例を適用することを検討するためにも、相続税の申告を行った方が望ましいと言えます。

賃料と相続税

  • 文責:所長 税理士 北野岳志
  • 最終更新日:2020年11月24日

1 賃料が問題になる場合

被相続人が貸地や貸家を所有している場合には、賃料が定期的に支払われることとなります。

被相続人が貸地や貸家を所有していたとしても、すでに支払日が到来している賃料について、きちんと支払がされていたら、相続税申告の場面で賃料の扱いが問題になることは、ほとんどありません。

しかし、現実には、被相続人が亡くなった時点で、支払日が到来しているのに支払がなされていない賃料があったり、逆に、支払日が到来していないのに、すでに支払がなされている賃料があったりすることがあります。

このような場合には、どのように相続税の申告を行うかについては、注意が必要です。

2 相続税の考え方

相続税との関係では、被相続人が亡くなった時点で賃料の支払日が到来しているかどうかで、賃料が相続財産となるかどうかが変わってくることとなっています。

被相続人が亡くなった時点で賃料の支払日が到来していれば、賃料の全額が相続財産となり、相続税の課税対象になります。

他方、被相続人が亡くなった時点で賃料の支払日が到来していなければ、賃料の全額が相続財産にはならず、相続税の課税対象にならないこととなります。

それでは、賃料の支払日は、どのような定め方をされているのでしょうか?

賃貸借契約書等を確認すると、おおむね、以下の2つのいずれかになっているものと思います。

① 当月分の賃料を当月の末日までに支払うものとする契約

② 当月分の賃料を前月の末日までに支払うものとする契約

仮に、被相続人が亡くなったのが6月3日だったとします。

① 当月分の賃料を当月の末日までに支払うものとする契約の場合

5月分の賃料は、支払日が5月末日→すでに支払日が到来しているので、相続税の課税対象になる。

6月分の賃料は、支払日が6月末日→支払日が到来していないので、相続税の課税対象にならない。


② 当月分の賃料を前月の末日までに支払うものとする契約の場合

5月分の賃料は、支払日が4月末日→すでに支払日が到来しているので、相続税の課税対象になる。

6月分の賃料は、支払日が5月末日→すでに支払日が到来しているので、相続税の課税対象になる。

※ 6月分の賃料については、対応する賃貸期間は6月1日から6月30日ですので、6月4日から6月30日までについては、被相続人が亡くなったあとの賃貸期間になります。そうであったとしても、被相続人が亡くなる前に支払日が到来している以上は、6月分の賃料は、全額が相続税の課税対象と扱われます。

このように、それぞれの賃料の支払日がいつになっているかを確認した上で、賃料が相続財産になるかどうかを確認する必要があることとなります。

3 支払日が到来しているのに、賃料の支払がされていない場合

支払日がすでに到来しているのに、賃借人から賃料の支払がなされていないことがあります。

いわゆる未払賃料です。

未払賃料については、支払日が到来している以上、賃料の全額が相続財産となり、相続税の課税対象になるものとされます。

このように、未収賃料が存在すると、実際には賃料を受け取っていないのにもかかわらず、その分、相続税が増額されることとなってしまいます。

未払賃料が年単位で発生していると、相続税も大きく増額されることとなり、かなりの負担を余儀なくされることとなります。

相続税との関係では、未払賃料の問題は早期に解決されるべきであることが分かります。

4 支払日が到来する前に、賃料が前払された場合

支払日が到来する前に、自発的に賃料の前払がなされることがあります。

いわゆる前受賃料です。

前払された賃料については、その支払日が到来する前に被相続人が亡くなると、賃料の全額が相続財産になりません。

そして、賃料の全額が相続財産にならない以上は、賃借人から返還を求めたら返還されるべきものと考えられますので、被相続人が負っていた債務となり、債務控除の対象とされます。

このように、前払された賃料については、被相続人に対して支払われており、被相続人の財産に組み込まれているにもかかわらず、債務控除により、相続税の課税対象から除外されることとなります。

前払された賃料の存在に気づくことができれば、その分、相続税が減額されることとなりますので、見逃さないようにしたいものです。

配偶者の税額軽減(配偶者控除)

  • 文責:所長 税理士 北野岳志
  • 最終更新日:2020年8月17日

1 配偶者の税額軽減(配偶者控除)とは

配偶者が相続等によって取得した財産については,相続税が大きく軽減される可能性があります。

これは,相続税法が,配偶者の税額軽減(配偶者控除)の制度を設けているためです。

相続財産については,配偶者の貢献によって形成されたものであるという側面がありますので,配偶者が相続財産等を取得することは,こうした貢献の精算の側面をもっています。このため,通常の相続と同様に課税することは,不適切であるといえます。

また,配偶者の今後の生活保障のため,配偶者の税負担を軽減すべきであるという政策的理由もあります。

ただ,配偶者の税額軽減(配偶者控除)の適用を受けるにあたっては,いくつかの要件を満たす必要があります。

早期に申告に向けての行動を開始しなければ,これらの要件を満たすことができなくなる可能性もありますので,注意が必要です。

2 配偶者の税額軽減(配偶者控除)により,どれくらい相続税は減額されるか

配偶者の税額軽減(配偶者控除)の適用を受けることができれば,配偶者が相続等によって取得した財産のうち,次の金額のどちらか多い金額までは,相続税が課税されないこととなります。


・ 1億6000万円

・ 配偶者の法定相続分相当額


前提として,配偶者の法定相続分相当額は,相続人が誰であるかにより,以下のとおり変わります。


① 亡くなった方の配偶者のみが法定相続人の場合

配偶者が100%

② 亡くなった方の配偶者と子や孫が法定相続人の場合

配偶者が2分の1

子や孫が2分の1

③ 亡くなった方の配偶者と父母が法定相続人の場合

配偶者が3分の2

父母が3分の1

④ 亡くなった方の配偶者と兄弟姉妹や甥姪が法定相続人の場合

配偶者が4分の3

兄弟姉妹や甥姪が4分の1


たとえば,亡くなった方の配偶者と子が法定相続人の場合,配偶者が取得した財産については,以下の金額までが非課税となります。


・ 遺産総額(債務控除後)が2億円の場合

1億6000万円>配偶者の法定相続分相当額2億円×2分の1=1億円

  ↓

配偶者については,1億6000万円までは非課税


・ 遺産総額(債務控除後)が4億円の場合

1億6000万円<配偶者の法定相続分相当額4億円×2分の1=2億円

  ↓

配偶者については,2億円までは非課税


このように,配偶者の税額軽減(配偶者控除)を活用すれば,かなりの金額の財産が相続税の課税対象から外れることとなります。

3 相続放棄をした相続人がいる場合の配偶者の税額軽減(配偶者控除)

ところで,相続放棄をした相続人がいる場合,配偶者の法定相続分額はどうなるのでしょうか?

たとえば,配偶者と子が法定相続人の場合,子が相続放棄をし,他に相続人がいないとすると,配偶者の法定相続分は100%になります。

このような場合には,相続財産の全額について,相続税が課税されないこととなるのでしょうか?

答えとしては,配偶者の税額軽減(配偶者控除)に関しては,相続放棄は考慮しないこととなっていますので,配偶者の法定相続分相当額は2分の1のままで計算されることとなります。

恣意的な相続放棄を行い,意図的に配偶者の税額軽減(配偶者控除)を増やすという相続税対策がなされることを防ぐため,配偶者の税額軽減(配偶者控除)の計算上は相続放棄を考慮しないこととなっています。

4 配偶者の税額軽減(配偶者控除)の要件

配偶者の税額軽減(配偶者控除)を利用するには,一定の要件を満たす必要があります。

その要件は,以下のとおりです。


① 被相続人の戸籍上の配偶者であること

配偶者の税額軽減(配偶者控除)を用いることができるのは,被相続人の戸籍上の配偶者のみです。

いわゆる内縁関係にある人は,配偶者の税額軽減(配偶者控除)を用いることができません。

戸籍上の配偶者でありさえすれば,別居状態であったとしても,婚姻後わずかな期間しか経過していなかったとしても,配偶者の税額軽減(配偶者控除)を用いることができます。

② 遺産分割や遺言により,配偶者が取得した財産が(一部でも)確定していること

遺産分割や遺言により,配偶者が取得した財産が(一部でも)確定している必要があります。

遺産が未分割のままであれば,配偶者の税額軽減(配偶者控除)を用いることができません。

配偶者以外の相続人が取得する財産が未分割であったとしても,配偶者が取得する財産が確定していれば,配偶者の税額軽減(配偶者控除)を用いることができます。

一部の遺産を配偶者が取得するものとし,残りの遺産の分割方法については配偶者を含む相続人で追って協議するものとしていたとしても, 配偶者の税額軽減(配偶者控除)を用いることができます。

③ 税額軽減の明細を記載した相続税の申告書を提出すること

相続税の申告書を提出しなければ,配偶者の税額軽減(配偶者控除)を受けることはできません。

申告期限までに相続税の申告を行っていなかったとしても,期限後に税額軽減の明細を記載した相続税の申告書を提出すれば,配偶者の税額軽減(配偶者控除)を受けることができます。

5 配偶者の税額軽減(配偶者控除)を用いる場合の手続

配偶者の税額軽減(配偶者控除)を用いる場合には,税額軽減の明細を記載した相続税の申告書を提出するとともに,一定の必要書類を提出する必要があります。

必要書類は,以下のとおりです。


① 戸籍謄本

被相続人と配偶者が婚姻関係にあることを証明するために必要です。

② 遺産分割協議書の写し,遺言書の写し

配偶者が取得した財産を明らかにするために必要です。

③ 印鑑証明書の原本(遺産分割協議書の写しを提出する場合)

真正に遺産分割協議が成立したことを証明するため,相続人全員の印鑑証明書の原本を提出する必要があります。


どうしても申告期限までに必要書類の準備が間に合わない場合は,申告期限後に必要書類を追完することで,特例の適用を受けることも可能ではあります。

3年以内の贈与加算と相続税

  • 文責:所長 税理士 北野岳志
  • 最終更新日:2020年8月11日

1 被相続人から贈与された財産は相続税の課税対象になるのでしょうか?

被相続人から生前に贈与された財産について,相続税が課税されることがあります。

具体的には,相続などにより財産を取得した人が,被相続人から相続開始前3年以内に贈与を受けた財産は,相続税の課税対象になるとされています。

贈与された財産がすべて相続税の課税対象にならないとされると,被相続人が亡くなる直前に,相続税の課税対象を減らす目的で,駆け込みで贈与を行うという相続税対策がなされるおそれがあります。

このような駆け込みでの贈与による相続税対策を行えないようにするため,3年以内の贈与も相続税の課税対象にするという規定が置かれています。

注意しなければならないのは,3年以内の贈与がいずれも贈与税の基礎控除(受贈者1人あたり110万円)の範囲内であり,贈与税の課税対象でなかったとしても,相続税の課税対象になるということです。

たとえば,贈与された財産が10万円であったとしても,相続税の課税対象になります。

他方,3年以内の贈与について贈与税が課税されていた場合は,贈与税の額を相続税の額から引き算することとなっています。

贈与税と相続税が二重に課税されることを防ぐため,このような調整が行われています。

2 いつからいつまでになされた贈与が相続税の課税対象になるのでしょうか?

相続税の課税対象になる贈与は,相続開始前3年以内になされた贈与です。

たとえば,被相続人が亡くなった日が2020年6月12日でしたら,2017年6月12日から2020年6月12日までになされた贈与が,相続税の課税対象になります。

3 誰に対してなされた贈与が相続税の課税対象になるのでしょうか?

相続税の課税対象になる贈与は,相続などにより財産を取得した人が受けた贈与です。

裏返せば,相続などにより財産を取得しなかった人が受けた贈与は,相続税の課税対象にはなりません。

したがって,相続人であっても相続人でなくても,相続などによって財産を取得した人については,3年以内の贈与にも相続税が課税されますが,財産を取得しなかった人については,3年以内の贈与に相続税が課税されることはないということになります。

なお,相続などにより財産を取得した人には,相続財産を取得した人だけでなく,生命保険金や死亡退職金を取得した人も含まれますので,注意が必要です。

たとえば,被相続人の孫(代襲相続人ではない)が生命保険金を受け取っている場合は,3年以内の贈与にも相続税が課税されます。

4 3年以内の贈与について,贈与税が課税されない特例の適用を受けている場合

贈与税については,特例の適用を受けることにより,贈与税が課税されないこととなることがあります。

たとえば,結婚して20年以上の夫婦の間で,居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合,贈与財産のうち2000万円までの部分については,贈与税が非課税となります。

このように,特例を適用して贈与税が課税されないこととなっている場合には,相続開始前3年以内になされた贈与であっても,相続税の課税対象にはならないものとされています。

特例を適用して贈与税が非課税となっている以上,相続税も非課税とされるべきと考えられるからです。

このように,贈与税が課税されない特例の適用を受けた結果,相続税の課税対象にもならないとされるものとしては,以下のものがあります。

・ 贈与税の配偶者控除(先述)

・ 直系尊属からの住宅取得資金の贈与のうち,非課税部分

・ 直系尊属からの教育資金の一括贈与のうち,非課税部分

・ 直系尊属からの結婚・子育て資金の一括贈与のうち,非課税部分

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