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名義預金とみなされないための贈与の方法

  • 文責:代表 税理士 西尾有司
  • 最終更新日:2023年9月4日

1 名義預金とは

将来の相続税対策として、親族に対して預金を贈与することがあります。

贈与した財産については、ご自身が所有する財産ではなくなりますので、将来、相続が発生した段階では、相続税の課税対象から外れることとなります。

※ ただし、相続、遺言、保険契約等により財産を取得した人に対し、相続前の3年以内(令和6年1月1日以降の贈与から、3年の期間は段階的に7年に延長されます)になされた贈与については、相続税の課税対象となります。

この点を踏まえると、親族に対して贈与し、ご自身が有している財産を減少させることにより、将来、課税される相続税を減少させることができます。

贈与の額が大き過ぎると、他方では、多額の贈与税が課税されることとなりますが、少額の贈与を繰り返すことにより、贈与税の課税も回避しつつ、合理的に相続税を減少させることもできるようになります。

たとえば、年間110万円まででしたら、基本的には贈与税は課税されないため、年間110万円の範囲内で贈与を繰り返す相続税対策も考えられます。

ただ、このような相続税対策を行うにあたっては、注意すべき点があります。

それは、贈与が行われたと評価されるためには、実態が伴わなければならないということです。

よくあるのが、親族名義の口座に送金したものの、その口座の通帳、証書、銀行印についてはご自身が管理されているという場合です。

ときには、親族の側では、送金された預金の存在すら把握していないということもあります。

このような場合には、親族に対して贈与がなされたという実態がないですので、贈与がなされていないとの前提で、相続税の課税がなされることとなります。

このように、形式的に親族名義でなされているに過ぎない預金のことを、名義預金と言い、相続税の課税対象とされてしまいます。

名義預金については、税務調査で指摘がなされ、追加課税の理由となされることも多いです。

名義預金の存在を意図的に隠していたと評価されると、最大35%の重加算税が課税されるおそれもあります。

このため、相続税申告では、名義預金に該当するかどうかの見分けを適切に行うことが重要であると言えます。

ここでは、名義預金に該当するかどうかのおおむねの判断基準を説明し、名義預金とみなされないための贈与について説明したいと思います。

なお、以下で述べる判断基準は、総合判断のための基準となります。

つまり、以下で述べる基準を1つでも満たせば、名義預金には該当しないということになるわけではなく、以下で述べる基準のうちどこまでを満たしているかにより、名義預金に該当するかどうかの判断がなされることとなります。

2 贈与契約の有無

まず、実際に贈与契約が存在するかどうかが重要です。

親族の側が預金の存在を知らない場合には、贈与契約が存在するということはできません。

このような観点から、贈与がなされる度に、贈与契約書を作成し、ご自身と親族が贈与契約書に署名を行うことは、有効な対策であると言えます。

3 通帳、証書、銀行印の管理

通帳、証書、銀行印については、ご自身が管理していると、贈与の実態がないと判断されるおそれがあります。

通帳、証書、銀行印については、親族の側で管理すべきでしょう。

特に、親族名義の預金の銀行印が、ご自身の預金の銀行印と共通のものになっている場合は注意が必要です。

この場合には、親族の側で銀行印を管理していたとは評価され難いです。

このため、銀行印については、別のものを用いた方が適切であると考えられます。

4 送金された預金の使途

送金された預金が、被相続人が必要な場合にしか使われず、親族の側で使うことがないといった場合があります。

このような場合には、親族に対して贈与がなされたという実態が存在しないとの判断がなされかねないです。

また、送金された預金が、誰も使わずにそのままになっている場合も、やや注意が必要です。

贈与された預金であれば、親族が必要なときに使うのが自然であり、まったくの手付かずだと贈与された実態がないのではないかという疑念を持たれる可能性があるためです。

贈与の実態があると言うためには、贈与された預金は、親族が何らかの使途で使う場面があるのが自然であると考えられます。

5 申告の有無

親族が送金を受けた預金について、年間の合計額が110万円を超える場合には、贈与税の課税対象になります。

贈与がなされたのであれば、年間110万円を超えるのでしたら、贈与税の申告、納付を行うのが自然であると言えます。

このような理由から、意識して、年間110万円を超える金額で贈与を行い、贈与税の申告、納付を行うことにより、送金された預金が贈与されたものであることをはっきりさせるという方法も考えられるところです。

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